全体論と要素還元主義(2)

物質を原子に分割する話に戻ろう。最初は,これで物質の性質もより単純な原理で説明出来るようになると考えられていた。ところが,はじめは数種類しか見つかっていなかった元素が,あれよあれよいう間にどんどん発見されて行ったのだ。元素のインフレである。ロシアの化学者(1834年-1907年)が元素の周期表のアイディアを思いついた1868年当時でも,すでに60種類ほどの元素が見つかっていた(現在では110種類以上見つかっている)。これでは多過ぎて,とても単純な原理による説明どころではない。そこで,メンデレ-エフはとりあえず,多過ぎる元素を少しでも学生に説明し易くするためにどうしようかと色々考えた。その結果,原子量(原子の重さのようなもの)の軽いものから順番に並べてみることを思いついた。すると,原子価(他の原子と結合するときの手の数)が周期的パターンを繰り返すことを発見する。それによって,それ以上分割できない最小単位だと思っていた原子が,実はさらに小さい部品で出来ている(内部構造がある)ことが予想されるきっかけになったのだ。そうして,原子は中心に重い原子核があり,そのまわりを電子がぐるぐる回っていて,更に,原子核は陽子と中性子からなることが後々発見された。

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